★ALBUM REVIEW (415) 【ミーシャ・シガノフ(Misha Tsiganov) - Spring Feelings (2016)】

★ALBUM REVIEW (415) 【ミーシャ・シガノフ(Misha Tsiganov) - Spring Feelings (2016)】

 

By Takaaki Kondo, Tokyo Jazz Review

 

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【Rating】

 

・ Musical Performance ★★★★★

・ Songs/Compositions ★★★★★

・ Arrangement           ★★★★★

・ Sound Quality          ★★★★☆

・ Overall Enjoyment   ★★★★★

 

 

 

(寸評)

 

・ スタンダード曲に緻密なアレンジを加えて、現代風に蘇らせている点が素晴らしい

・ アンサンブル・ソロ共に高水準で「現代NY Jazz」の高いクオリティーを堪能できる

 

 

ロシアでのクラシックのコンサートピアニストとしての輝かしい経歴を捨て、ジャズを演るために裸一貫で24年前に渡米したというミーシャ・シガノフ(Misha Tsiganov)。本作は、現在NYの中堅ピアニストとして確固たる地位を築いたミーシャ・シガノフの『Artistry Of The Standard』(2013)の続編とも言える作品。

 

前作同様、アレックス・シピアジン(tp)とシーマス・ブレイク(ts)という2管フロントに、 ハンス・グラヴィシュニク(b)、ドナルド・エドワーズ(ds)という強力なメンバーを揃えたクンテットで、スタンダード4曲(ショーター曲2曲)、オリジナル5曲という構成。

 

相変わらずミーシャの超難易度の高い、しかしそれが「単なる知識のひけらかし」ではない、非常に美しい緻密なアレンジと作曲能力が光る。

 

そして、そのミーシャ曲とアレンジを平然と演ってのけるメンバーの力量に驚愕する。アドリブもアンサンブルも非常に高度かつ楽しめる内容で、演奏・アレンジ・作曲全てにおいて非常にクオリティの高い作品となっている。

 

『レコーディングは1日で済ませたけど、その数日前に4時間のリハーサルを行った』と語るが、それでも驚異的な出来である。日頃共に演奏しているメンバーだからこそ出来た事なのであろう。

 

以下、曲毎に簡単に解説を加える。

 

1. You And The Night And The Music (Arthur Schwartz)

 

1934年のArthur Schwartzのこの作品では、次のようなアレンジが施されている([A]の部分だけ抜粋)。

 

[A]

|(4/4)C-9|F#13sus|(3/4)B♭-9|(4/4)C-9||A7(#5#9)|(3/4)D♭13sus|D♭13sus|

|(4/4)F-6/C|G13(♭9#11)|(3/4)A-7(#5)|E♭/B|(4/4)C△7(#11)|C△7(#11)|(3/4)G△7(#11)|G△7(#11)|

 

こう書くと非常に難解なアレンジであるが、彼等の演奏がとてもスムースなので「メロディーの美しさを一層際立たせる為のアレンジ」であることが良くわかる。サビとコーラスの最後に入るリズミックな決めも、カッコイイ。

 

ソロ・オーダーは「ミーシャ(p)」→「シピアジン(tp)」→「ブレイク(ts)」。いずれも1コーラス目はこのアレンジに沿って演奏され、2コーラス目はオリジナルのコード、4/4(拍子)で「通常通り」に演奏される。3人共アレンジの難解さをものともせず、知的でダイナミックなソロを展開しており痛快である。そして2コーラス目に4beatになりベースがウォーキングを始めた時の爽快感・開放感が何とも云えずに気持ち良い。そこもこのアレンジの狙いのひとつなのであろう。

 

Openerでノックアウトされること確実である。

 

2. Jed's Place (Misha Tsiganov)

 

一転してリラックス感満載のミディアム・スインガーは、Tenor sax奏者Jed Levyの自宅地下のスタジオでセッションを重ねて来たミーシャの思いを曲にした作品。アレックス・シピアジンがフリューゲルホルンで吹く、鋭角的且つ歌心溢れるソロが素晴らしい。

 

3. October In Kiev (Misha Tsiganov)

 

この曲はトリオで演奏される。ウクライナの首都キエフでのコンサートを行っているミーシャが、キエフの町並み美しさを表現したラテン・バラード曲。リズムはHerbie Hancockの「Speak Like a Child」を想起させる。冒頭のピアノ・ソロのイントロで、ミーシャの非常に美しい音色(ロシアのクラシック・エリートだったことがよくわかる)に心奪われる。

 

曲調・演奏共に非常にエレガントで、一聴ヨーロッパのピアノ・トリオを想起させる。「ミーシャは生粋のヨーロッパ人(ロシア人)で、ロシアのクラシックのエリート・ピアニストだったのだから、当然ではないか!」と独り言つ。成る程、この「気品」は本物である。個人的にはもう少し多くこのピアノ・トリオ・フォーマットでの曲を聴きたいと思う。

 

4. Yes Or No (Wayne Shorter)

 

言わずと知れたWayne Shorterの名盤「JuJu(1964)」に収録された名曲。ここではメロディーに合わせて「7/4,2/4,5/4,4/4」と動いてくHead部分のアレンジが秀逸でカッコイイ。

 

ソロは、まずアレックス・シピアジンがオリジナルのテンポ・コードで2コーラス痛快に吹きまくる(上手すぎる!)。その後テンポを落とした4/7の浮遊するようなリズムに移行し、シーマス・ブレイクがフラジオを多用してエモーショナルに咆哮。そしてミーシャがパーカッシヴなタッチで完成度の高いソロをと、各々2コーラス披露する。

 

CODA部分で徐々にバンドの「熱」が上がっていき、全員が一気にドラマティックなEndingに突入していく様が圧巻である。

 

この名曲には過去、数多のミュージシャンが挑戦しており数々のバージョンがあるが、本バージョンは「ベストのひとつ」と云っても過言ではなかろう。

 

5. Jumping Michael (Misha Tsiganov)

 

『息子のマイケルが6歳当時、一家が住んでいたアパートで飛び跳ねて遊んでは隣人から苦情を言われていた、その楽しい思い出を曲にしたんだ』とミーシャが説明する曲。

 

ミディアム・テンポのカリプソ調リズムに乗ってホップするようなスタッカートの8分音符が「飛び跳ねる」メロディーが楽しい。8分音符の1音ごとにが割り当てられた「C△7, A-7, A♭-7,D♭7, D△7, B-7, E♭-7,A♭7~」というコードが、楽しさを失わずに知的な印象を与えている。[B]のハーモニーはHerbie Hancockの「Maden Voyage」を想起させ、美しい。ソロは「ミーシャ」~「アレックス・シピアジン」「シーマス・ブレイク」。

 

6. Infant Eyes (Wayne Shorter)

 

こちらもWayne Shorterの「Speak No Evil (1966)」に収録された、非常に美しい名曲。オリジナルのコードは

[A]

|G-7|F-7|E♭△7|A13(♭9)|

|G♭△7|F9sus|E♭-7|B♭9sus|B♭7|

 

であるが、ミーシャは7/4拍子で、メロディーに合わせて次のような非常に美しいリハーモニゼイションを施している。

 

|G-11 Bø|B♭-9 F-11 D7(#9)|E♭△6/9 G-11|A7(#9) C-11|

|G♭△7(#11) E♭-11|F13sus D♭13sus|E♭-11 A♭11sus|B♭sus B♭7(#9)|

 

[B]からアレックス・シピアジン(フリューゲルホルン)とシーマス・ブレイクが交互に吹く主旋律とカンターラインが非常に美しい。それにしてもアレックス・シピアジンのフリューゲルホルンの音色は一級品である。

 

ソロは、グラヴィシュニク~ブレイク~ミーシャ。ハンス・グラヴィシュニクの素晴らしいピッツィカートの音色、シーマス・ブレイクの、安易にOutに流れずメロディーを重視したソロが素晴らしい。再度メロディーを挟んでアレックス・シピアジンのフリューゲルホルン・ソロに入り、CODA~Endingまでシピアジンのソロが続く。アレックス・シピアジンのソロも含めて、このトラックも

 

『Infant Eyesの名演のひとつ』

 

であり、本アルバム中でも最高の1曲である。

 

7. The Night Has A Thousand Eyes (Jerome Brainin)

 

ミーシャは16歳の時、アルバム「Coltrane's Sound」(1964)に収録された同曲を聴き『それまでエロール・ガーナーやオスカー・ピーターソンを聴いてきた僕にとって、このマッコイ・タイナーのプレイは衝撃だった』と語る。

 

このアルバムのバージョンも鮮烈である。

[A]の最初の8小節は、ミーシャが『他のリズムパターンを包含した大きな9/4のリズム』と表現する、9/4拍子のカリプソ風のリズムに乗って「D11sus」一発で処理され、続く8小節は「4/4の高速4Beat」で進行する。この対比が面白い。

 

[B]は

 

|F13sus|F7(#9|A/F|A/F|

|E♭13sus|E♭7(#9)|G/E♭|G/E♭|

|D13sus|E13sus|D13sus|C11sus|

 

というリハモの上で、2裏にアクセントを置いた決めのリズムパターンが続いていく。

 

ソロは、シピアジン~ミーシャ(「4/4の高速4Beat」)~ブレイクが1コーラスずつ。テーマに戻り、CODAは「9/4拍子カリプソ風リズム、D11sus一発」の上でミーシャがマッコイを髣髴とさせる熱いソロを弾き、静かなEndingを迎える。

 

8. Blues For Gerry (Misha Tsiganov)

 

Criss Crossレーベルのオーナー、Gerry Teekensのリクエストによる『ファンキーでグルーヴィーなブルース』。Fのブルースだが、各コードは(#5#9)となっており、また、9~10小節目のCadenceが

 

|E△7(#11)D△7(#11)|D♭△7(#11)B△7(#11)|F7(#5#9)~

 

となっている。

ソロ・オーダーは、シピアジン~ブレイク~ミーシャ~グラヴィシュニク。シピアジンのアウトを駆使したフレーズ、ブレイクの知的でありながらBlusyでEarthyなフレージング、そしてミーシャによるChick Coreaの「Matrix」を想起させるアプローチが素晴らしい。

 

9. Spring Feelings (Misha Tsiganov)

 

ラストは『春』をテーマにしたリラックスした曲。[A]のパートは全てメジャー・コードから成っている。ミーシャはその意図を『春の午後の楽しい感じ - 陽光・麗らかな気候・楽しい気持ち - を表現しているんだ』と語る。8分3連符をリズミカルに使ったカリプソ風の心地良いメロディー持つが、下記のような印象的なハーモニーが知的な印象を加えている。

 

 

|D△7 B♭△7|G△7 E♭△7|D△7|B♭△7|

|E♭△7 B△7|A♭△7 E△7|E♭13sus|G13sus|

 

 

今やバリバリのNew YorkerとしてNY Jazz Sceneで活躍するミーシャの「旬」が詰まった快作である。

 

 

Zealously recommended!!!

 

 

▶ Personnel

 

Misha Tsiganov(p)

Alex Sipiagin(tp,flh)

Seamus Blake(ts)

Hans Glawischnig(b)

Donald Edwards(ds)

 

Recorded on September 15, 2015 at Systems Two Recording Studios, N.Y.

 

▶ Tracks Listings

 

1. You And The Night And The Music (Arthur Schwartz)

2. Jed's Place (Misha Tsiganov)

3. October In Kiev (Misha Tsiganov)

4. Yes Or No (Wayne Shorter)

5. Jumping Michael (Misha Tsiganov)

6. Infant Eyes (Wayne Shorter)

7. The Night Has A Thousand Eyes (Jerome Brainin)

8. Blues For Gerry (Misha Tsiganov)

9. Spring Feelings (Misha Tsiganov)

 

▶ Misha Tsiganov - Website

 

★ Official Website

 

http://www.mishajazz.com/

 

★Facebook

 

https://www.facebook.com/misha.tsiganov

 

▶ Preview

 

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iTunes

 

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Misha Tsiganov - Spring Feelings (スコア)
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コメント: 3 (ディスカッションは終了しました。)
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